サービス・プロバイダーにとって、導入する機器のネットワーク・リソースを出来るだけ無駄なく、最大限に活用してサービスを提供することは、ビジネス上非常に重要なことです。
ところが、今日の多くのネットワーク・アーキテクチャは、「シングルサービスルーター」という古いルールで規定されています。その意味は、モバイルバックホール、プロバイダーエッジ、ビジネスサービス、インターネットピアリング、コアネットワークなどの各サービスが、専用のシャシーベースのルーター群で構成されたネットワーク上で提供されている、ということです。
このモデルが非効率であることは明らかに思えるのですが、それでもすでに何年も前から、ネットワーク・ベンダーはこのアプローチを維持し、サービス・プロバイダーはそれに乗っかってきました。
従来のシャシーに内在する非効率性
昔も今も、ほとんどの大規模なネットワークの基盤となっているのが、この従来型のシャシーです。本質的に非効率なリソース利用で動作するように設計されているため、最適とは言えないCapExとOpExの構造になっています。
ドライブネッツ ネットワーククラウドの紹介
このようなシャシーは、さまざまなタイプのリソースが固定されていることが前提となっています。
- コンピュート・リソース: x86 CPUの実行命令
- ストレージ資源: RAM、ストレージなど
- 帯域幅リソース:シャシー内外のトラフィック転送(別名データプレーン)
- TCAM (Ternary Content-addressable Memory) リソース:FIB (Forwarding Information Bases) (転送情報ベース)、ACL (Access Control Lists)(アクセス制御リスト)、カウンタなどを格納する高速メモリリソースなど。
- QoS (Quality of Service) (サービス品質)リソース:SLA (Service Level Agreement) (サービスレベル契約)仕組みを実現するためのバッファ、キュー、ポリサーなどのリソース。
モノリシックなアーキテクチャ: リソース活用の壁
モノリシック シャーシは様々なネットワークシナリオに対応できるように設計されているにも関わらず、実際に利用される場面では、ある特定のネットワークシナリオのみを実施します。そのため、前述のようなリソースの組み合わせは、どのようなシナリオにも対応できるようにスーパーセットで(つまり、余分に)設計されており、プラットフォームごとに固定されてしまっています。
つまり、ある特定のネットワークシナリオでプラットフォームを使用する場合、モノリシックアーキテクチャ特有の非効率性により、シャシーは前述のリソースのうちの少なくとも1つを十分に活用することができません。
これは、ほとんどのネットワーク機能が異なるリソースセットを必要とするためで、通常、1 つまたは 2 つの使用頻度の高いリソースと、その他の使用頻度の低いリソースが混在しています。
例えば、コア機能(Pルータなど)は、パケット転送とラベルスイッチングを主に扱うため、強い帯域幅のリソースを必要とします(ルーティングテーブルサイズ、アクセスリスト、QoSはあまり必要になりません)。この機能では、x86、TCAM、QoSのリソースはほとんど使用されません。
一方、同じネットワークにあるエッジルータ(PE ルータなど)は、より多くのx86とTCAMを必要としますが、機器単位でみると、特定の転送やアクセスリストなどを必要とする比較的低容量なトラフィックに対応するため、それほど多くの帯域リソースは必要とされません。
代表的なネットワーク機能とサービス
以下の図は、代表的なネットワーク機能とサービスに対するリソース要件を示したものです。この図から明確に分かることは、様々なネットワークシナリオでリソースの非効率利用につながる要件の組み合わせの相違点です。つまり、どのようなネットワークシナリオでも、ほとんどのモノリシックルーターの導入には無駄なリソースが発生してしまうことを示しています。これらのリソースは、ルーターの原価のうち主要な部分を占めています。その結果、事業者はネットワークの成長曲線に関係なく、使っていないハードウェアリソースに代金を支払うことになります。
実際には、この非効率性はネットワークを立ち上げた初日から始まっており、モノリシックシャシーで使用頻度の高いリソースが枯渇した時点でピークに達します。この時、未使用のリソース(そのネットワークシナリオでは使用頻度の低いリソース)はまだ豊富に残っているにもかかわらず、シャシーはブロックされます。
本質的な非効率性がネットワークへの継続的な投資を阻害する
ネットワークが成長するにつれ、これらの利用頻度の高いリソースの消費も増大し、未使用リソースの増加がさらに激化します。ネットワークシナリオの数が増えるにつれて、この非効率性は最終的にすべてのハードウェアリソースに拡大し、事業者の投資を著しく浪費する一方で、未使用リソースからは何の利益も得られません。つまり、無駄遣いとなってしまうのです。
ドライブネッツ ネットワーク クラウド
ドライブネッツでは、こうした従来のモノリシックシャーシの非効率性からくるサービス・プロバイダのビジネス課題を解決するため、ネットワーク・クラウド ソリューションを開発・提供しています。本ブログの他の記事や当社ウェブサイト をぜひご参照ください。また、導入にご関心のある日本のお客様は、ウェブサイト からコンタクトください。
Related posts
レガシーネットワークからディスアグリゲーション(分離型)ネットワークへ: KDDI がドライブネッツのネットワーククラウドを導入
2 年前、KDDI は他のサービスプロバイダー(SP)と共同でテレコムインフラプロジェクト(TIP)に参画し、IP ネットワークにおけるオープンかつディスアグリゲーション(分離型) ..
MWC 2023 で語られた 分離分散型クラウドネイティブネットワーキング
先週はバルセロナにいつもの景色が戻ってきました。ここ数年の世界的なパンデミックがなかったかのように、MWC (Mobile World Congress) ..
DNOS ホワイトペーパーの 日本語翻訳版ができました
ドライブネッツ日本語ブログでは、これまで英語ブログのなかで有用な記事の日本語化に取り組んできましたが、今回、初めてホワイトペーパーの翻訳も行いました。第一弾は DNOS (Drivenets..